Japanische Klassiker mit Furigana
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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
Lesen Sie 異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二 (うみがめ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 144.507 Zeichen · 291 Bildschirme
今まで元気よく歌っていた人が急に溜息をついて憂鬱になって来たのだから、どうもおかしい。」
彼はこう言いかけて、自分も低い溜息をつきながら手に持っている桔梗の花を軽く投げ捨てた。
「それからどうしたね。」と、僕は催促するように訊いた。
「それから……。僕はこう言った。『多年の経験というけれども、多年のあいだには盂蘭盆の晩に海へ出て、一度や二度は偶然に何かの災難に遭った者がなかったとも限らない。その偶然の出来事を証拠にして、いつでもきっと有るように考えるのは間違いですよ。』――けれども、美智子さんは承知しないで、更にこんなことを言い出したんだ。『たとい偶然にしても、その偶然の出来事に今夜も出逢わないとは限りますまい。』――そういえばそんなものだが、なにしろ美智子さんがこんなことを言い出すのは、ふだんに似合わないことだ。しかし、いつまで議論をしても果てしがないから、僕はさからわずに舟を戻すことにした。
その時だ。櫂を把っている僕の手を美智子さんはしっかり掴んで『あれ、あれ……人魚が……人魚が。』と言う。なんだろうと思って見かえると、なんにも見えない。月は皎々と明るく、海の上は一面に光っている。