Japanische Klassiker mit Furigana
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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
Lesen Sie 異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二 (うみがめ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 144.507 Zeichen · 291 Bildschirme
「卑怯な伜め。未練に逃げ隠れて親の顔にも泥を塗る、にくい奴でござる。」と、房八郎は嘆息した。
かれは見あたり次第に伜を引っ捕えて、詰腹を切らせる覚悟であったらしい。彼が平生の気性を知っている織衛は、それを察して気の毒にも思ったが、今更なんと言って慰める言葉もなかった。房八郎の師弟と織衛の主従とは相前後して鬼婆横町にはいると、その中程まで来かかった時に、織衛の中間は立ちどまって提灯をむこうへ差向けて、「あれ、あすこに……。」と、ややおびえたような声でささやいた。
大溝のふちには白い物が坐っていた。それが問題の妖婆かと、織衛がきっと見定めるひまもなく、房八郎は弟子に声をかけた。
「矢上、それ。」
師匠と弟子は走りかかって、左右からかの怪物を取押えると、怪物はのめるようにぐたりと前に倒れた。倒れると共に、それを埋めている雪の衣は崩れ落ちて、提灯の火の前にその正体をあらわした。彼は石川房之丞で、見ごとに腹をかき切っていた。ゆうべから何処に忍んでいて、いつこのところへ立戻って来たのか知らないが、彼はあたかもかの妖婆が坐っていたらしい所をえらんで、おなじように坐って、同じように雪に埋められて、真っ白になって死んでいたのであった。