Japanische Klassiker mit Furigana
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きけいのてんにょ
畸形の天女
江戸川 乱歩
Lesen Sie 畸形の天女 (きけいのてんにょ) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.893 Zeichen · 35 Bildschirme
「誰だ」
意気地なく声がかすれた。
「きさま、よくも、きさま……」
我慢に我慢していたのが破裂したような、泣きわめきだった。そして、アッと思うまに、頑丈なからだが、松永にぶつかってきた。キラッと光ったものがある。ナイフを握っているのだ。
こちらは、とっさに起きなおって、相手のナイフを持つ手を掴むのがやっとだった。青年は恐ろしい力を持っていた。起きなおったばかりで、腰に力がはいっていなかったので、すぐあお向きに倒されてしまった。青年は彼の上に馬乗りになった。
松永は両手で、青年のナイフを持つ手を支えていた。全身の力をふりしぼって支えていた。青年は左手で、彼の手を押しのけようとあせった。骨の太い鉄のような手だった。手先ではだめだと思ったのか、左の肱をまげて松永の両手のあいだに入れて、梃のようにねじった。松永の右手がはなれた。もう支えるものは左手だけになった。ナイフの鋭い刃先が、ジリリ、ジリリと目の前に迫まってくる。そして、青年の臭い熱い息が、ハッハッと彼の顔に襲いかかってきた。
もうだめだと思った。おれは今殺されるのだ。妻の良子の顔、長男の弘一の顔、次女のるり子の顔、宮城貿易商社の誰彼の顔が、非常に鮮明に、頭の中に映った。