Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぎわく

疑惑

芥川 竜之介

Lesen Sie 疑惑 (ぎわく) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.341 Zeichen · 25 Bildschirme

Aozora Bunko

そこで店先に佇みながら、何気なくその風俗画報を一冊手にとって見ますと、表紙に家が倒れたり火事が始ったりしている画があって、そこへ二行に「明治廿四年十一月三十日発行、十月廿八日震災記聞」と大きく刷ってあるのでございます。それを見た時、私は急に胸がはずみ出しました。私の耳もとでは誰かが嬉しそうに嘲笑いながら、「それだ。それだ。」と囁くような心もちさえ致します。私はまだ火をともさない店先の薄明りで、慌しく表紙をはぐって見ました。するとまっ先に一家の老若が、落ちて来た梁に打ちひしがれて惨死を遂げる画が出て居ります。それから土地が二つに裂けて、足を過った女子供を呑んでいる画が出て居ります。それから――一々数え立てるまでもございませんが、その時その風俗画報は、二年以前の大地震の光景を再び私の眼の前へ展開してくれたのでございます。長良川鉄橋陥落の図、尾張紡績会社破壊の図、第三師団兵士屍体発掘の図、愛知病院負傷者救護の図――そう云う凄惨な画は次から次と、あの呪わしい当時の記憶の中へ私を引きこんで参りました。私は眼がうるみました。体も震え始めました。苦痛とも歓喜ともつかない感情は、用捨なく私の精神を蕩漾させてしまいます。