Japanische Klassiker mit Furigana
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ぎわく
疑惑
江戸川 乱歩
Lesen Sie 疑惑 (ぎわく) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.308 Zeichen · 37 Bildschirme
一人の人間が、同時に二ヶ所にいるということは、どうしたって不可能じゃないか」
「それは不可能だね」
「じゃ、それでいいだろう。君が犯人であるはずはない」
「だが、部屋の中の蒲団の上に寝ていたって、戸外の人が殺せないとはきまらない。これは、一寸だれでも気付かない事だ、おれも最近まで、まるでそんなことは考えていなかった。ところが、つい二三日前の晩のことだ。ふっとそこへ気がついた。というのは、やっぱり親父の殺された時刻の一時頃だったがね、二階の窓の外で、いやに猫が騒ぐのだ。二匹の猫が長い間、まるで天地のひっくり返る様なひどい騒ぎをやっているんだ。あんまりやかましいので、窓を開けておっ払らうつもりで、おき上ったのだが、そのとたんハッと気づいた。人間の心理作用なんて、実に妙なものだね。非常に重大なことを、すっかり忘れて平気でいる。それがどうかした偶然の機会に、ふっとよみがえって来る、墓場の中からゆう霊が現れる様に恐しく大きな、物すごい形になってうかび上って来る。考えて見ると、人間が日々の生活をいとなんで行くということは、何とまああぶなっかしい軽業だろう。一寸足をふみはずしたら、もう命がけの大怪我だ。