Japanische Klassiker mit Furigana
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くじょしょうろく
痀女抄録
矢田 津世子
Lesen Sie 痀女抄録 (くじょしょうろく) von 矢田 津世子 (やだつせこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.578 Zeichen · 65 Bildschirme
種村の寿女さんは佝僂であった。母親のはなしに、寿女が十四の時、腰が痛い痛いと喧しく愬えるので、近くの灸点所へ連れていって、どうやら痛みをとめてもらったものの、それから間もなく腰が抜けるようだと喚き出されて、これはどうも下の患いらしいと独り合点して、それからは人目を憚り、長い間漢方医がよいをさせていたという。脊髄のほうを冒されて手おくれになっていると分ったのは、もう余程のちのことだったという。専門の医者にも診せず姑息な手当をしていたのも、跡継夫婦への気兼ね心からで、後添えだった寿女の母親は、腹ちがいのこの息子夫婦へは何かと引け目さを感じていた。
一家は尾久に住まっていて、塗料工場をもち相当手広く商売をしていたが、父親が亡くなると、やがて、親戚の者たちのはからいで、母娘は、池ノ端数寄屋町の、ちょうど、造作が入ったばかりの小店を借り受けて、荒物屋をはじめた。寿女が十七の時であった。
暮しのほうの足し前は、尾久の家から届けるようにと親戚の者たちのまえで話は決まったが、実行したのは初めの半年ばかりの間のことで、だんだん不景気を口実に途絶えがちになり、そのうちいつか歇んでしまった。