Japanische Klassiker mit Furigana
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くじょしょうろく
痀女抄録
矢田 津世子
Lesen Sie 痀女抄録 (くじょしょうろく) von 矢田 津世子 (やだつせこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.578 Zeichen · 65 Bildschirme
娘たちと並んで行く姿を、母親は見送っていた例しがなかった。すぐとお針にとりかかる。夢中になって縫いはじめる。母親もまた独りの時は、凝っとしていることがなかった。手を遅らせまいとばかり、ただへ針に不具の娘へ行く思いを託して駆り立てようとする。こんなとき、よく縫い違いをした。
往き来の人の中には、よく振りかえってじろじろと寿女を見る人があるので、つれの娘たちは顔を赧らめて、何気ないふうに自分たちだけで話をはずませたりして行く。
「あたし、とっても早足だかち先きへ行って待ってるわね。ごめんなさいね」
寿女はきっとこんなことを言って、真っ赤になってせいせい息を切らして、先きへ行く。
せっかく誘ってやったのに、置き去りにするなんて、ずいぶんね、と娘たちは不満を洩らしあったが、
「でも、ねえ、並んで歩くよりか、ねえ」
と、ひとりが頸をすくめてちょろりと舌を出すと、みんなも頸をすくめてクスクス笑いあった。
大通りの雑沓の中から寿女は伸び上るようにして、にこにこして、連れのほうをちょいちょいと振りかえってみる。そして、丸く盛りあがった背が弾んでみえるほどの急ぎ足で、間もなく小さな姿はまったく人混みに隠れてしまう。