Japanische Klassiker mit Furigana
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くじょしょうろく
痀女抄録
矢田 津世子
Lesen Sie 痀女抄録 (くじょしょうろく) von 矢田 津世子 (やだつせこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.578 Zeichen · 65 Bildschirme
溝のきわの、ひと叢の痩せた草へ眼をうつした。泥に染まり、それでも赤い米粒ほどの花をつけていた。
溝には、いろいろな物が捨ててあって、真っ黒い泥が澱んでいた。泥のしみた古下駄だの空罐だので堰かれたところに、僅か水が溜っていて、そこに青空が遠々しく映っていた。寿女は呆んやりして、いつまでも、それを眺めていた。
この尾久の家に来てから寿女はよく粗相をした。小皿をとり落したり、醤油を注ぎそこねて板の間へこぼしたり、使いに出て釣り銭を忘れてきたりした。
嫂は、自分からは寿女へ用を吩咐けたことがなかった。
「お寿女さんは並のからだと違いますもの」とか、「そんなに働いちゃあ、からだにさわりますよ」とか口癖に言って、寿女のしかけた用事までも、子供たちにさせる。
寿女は大事にされながらも嫂の扱いから、自分の不具の身をいよいよ引け目に思う。嫂の口調は優しく劬わり深いけれども、その優しさ劬わり深さでいびられているような心地さえする。その優しさで、折角しかけた用事をひったくられる心持ちがする。そのような優しさ劬わり深さをみせられるよりは、寿女は、罵られながら扱使われたほうがましだと思った。