Japanische Klassiker mit Furigana
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びょういんふうけい
病院風景
寺田 寅彦
Lesen Sie 病院風景 (びょういんふうけい) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.521 Zeichen · 8 Bildschirme
屋上へのぼる。階上に洗濯室が二つ。鼠色の制服を着た雑使婦の婆さんが洗濯している。どこかミレーの絵の鼠色の気分である。屋上の砂利の上に関東八州の青空。風が強くて干し物がいくつか砂利の上に落ちている。清らかになまめかしい白足袋も一足落ちている。北側の胸壁にもたれて見下ろす。巡査が一人道側へ立って警戒している。何の警戒か分からぬ。しかし何かを警戒していることは分かる。
H首相が入院していた時の物々しい警戒を思い出す。悪いことをしないものは恐ろしくて通れなかった。
昔の医科大学の時計台もとくに無くなった。去年札幌へ行って、明治時代の時計台建築の遺物を見て涙が出そうな気がした。年を取ると涙腺の居ずまいが変ると見える。
「鉄門」も塞がれた。鉄門という言葉は明治時代の隅田川のボートレースと土手の桜を思い出させる。鉄門が無くなって、隅田堤がコンクリートで堅まれば、ボートレースの概念もやはり変って来る。明治の隅田川はもうなくなった。ただの荒川下流になった。
またある日。
本郷区役所がコンクリートの豆腐に変った。隣りのからたち寺の樹立、これだけは昔のままらしい。
電柱の雀がからたち寺へ飛んで行く。