Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちじんのあい

痴人の愛

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme

Aozora Bunko

「差支えたってどうにかなるわよ」

「どうにかなるって、どうなるのさ。どうにもなりようはありゃしないよ」

「じゃあ何のためにダンスなんか習ったのよ。―――いいわ、そんなら、もう明日から何処にも行かないから」

そう云って彼女は、その大きな眼に露を湛えて、恨めしそうに私を睨んで、つんと黙ってしまうのでした。

「ナオミちゃん、お前怒っているのかい、………え、ナオミちゃん、ちょっと、………此方を向いておくれ」

その晩、私は床の中に這入ってから、背中を向けて寝たふりをしている彼女の肩を揺す振りながらそう云いました。

「よう、ナオミちゃん、ちょっと此方をお向きッてば。………」

そして優しく手をかけて、魚の骨つきを裏返すように、ぐるりと此方へ引っくり覆すと、抵抗のないしなやかな体は、うっすらと半眼を閉じたまま、素直に私の方を向きました。

「どうしたの? まだ怒ってるの?」

「………」

「え、おい、………怒らないでもいいじゃないか、どうにかするから、………」

「………」

「おい、眼をお開きよ、眼を………」

云いながら、睫毛がぶるぶる顫えている眼瞼の肉を吊りあげると、貝の実のように中からそっと覗いているむっくりとした眼の玉は、寝ているどころか真正面に私の顔を視ているのです。