Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちじんのあい

痴人の愛

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme

Aozora Bunko

「もうどッこへも行かないッて、眼に一杯涙をためていたじゃないか。いつまで立ってもお前はまるでだだッ児だね、大きなベビちゃん………」

「私のパパちゃん! 可愛いパパちゃん!」

ナオミはいきなり私の頸にしがみつき、その唇の朱の捺印を繁忙な郵便局のスタンプ掛りが捺すように、額や、鼻や、眼瞼の上や、耳朶の裏や、私の顔のあらゆる部分へ、寸分の隙間もなくぺたぺたと捺しました。それは私に、何か、椿の花のような、どっしりと重い、そして露けく軟かい無数の花びらが降って来るような快さを感じさせ、その花びらの薫りの中に、自分の首がすっかり埋まってしまったような夢見心地を覚えさせました。

「どうしたの、ナオミちゃん、お前はまるで気違いのようだね」

「ああ、気違いよ。………あたし今夜は気違いになるほど譲治さんが可愛いんだもの。………それともうるさい?」

「うるさいことなんかあるものか、僕も嬉しいよ、気違いになるほど嬉しいよ、お前のためならどんな犠牲を払ったって構やしないよ。………おや、どうしたの? 又泣いてるの?」

「ありがとよ、パパさん、あたしパパさんに感謝してるのよ、だからひとりでに涙が出るの。