Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちじんのあい

痴人の愛

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme

Aozora Bunko

―――こう云うとひどく酒飲みのようですけれど、実は私は甚だ下戸の方なので、時間つぶしに、女の飲むような甘いコクテルを拵えて貰って、それをホンの一と口ずつ、舐めるように啜っていたのに過ぎないのですが、そこへ彼女が料理を運んで来てくれたので、

「ナオミちゃん、まあちょっと此処へおかけ」

と、いくらか酔った勢でそう云いました。

「なあに」

と云って、ナオミは大人しく私の側へ腰をおろし、私がポケットから敷島を出すと、すぐにマッチを擦ってくれました。

「まあ、いいだろう、此処で少うししゃべって行っても。―――今夜はあまり忙しくもなさそうだから」

「ええ、こんなことはめったにありはしないのよ」

「いつもそんなに忙しいかい?」

「忙しいわ、朝から晩まで、―――本を読む暇もありゃしないわ」

「じゃあナオミちゃんは、本を読むのが好きなんだね」

「ええ、好きだわ」

「一体どんな物を読むのさ」

「いろいろな雑誌を見るわ、読む物なら何でもいいの」

「そりゃ感心だ、そんなに本が読みたかったら、女学校へでも行けばいいのに」

私はわざとそう云って、ナオミの顔を覗き込むと、彼女は癪に触ったのか、つんと済まして、あらぬ方角をじっと視つめているようでしたが、その眼の中には、明かに悲しいような、遣る瀬ないような色が浮かんでいるのでした。