Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
その時そう云う声が聞えて、つかつかとナオミの傍へやって来たのは、さっき菊子と踊っていた、すらりとした体つきの、女のようなにやけた顔へお白粉を塗っている、歳の若い外人でした。背中を円く、ナオミの前へ身をかがめて、ニコニコ笑いながら、大方お世辞でも云うのでしょうか、何か早口にぺらぺらとしゃべります。そして厚かましい調子で「プリースプリース」と云うところだけが私に分ります。と、ナオミも困った顔つきをして火の出るように真っ赤になって、その癖怒ることも出来ずに、ニヤニヤしています。断りたいには断りたいのだが、何と云ったら最も婉曲に表わされるか、彼女の英語では咄嗟の際に一と言も出て来ないのです。外人の方はナオミが笑い出したので、好意があると看て取ったらしく、「さあ」と云って促すような素振りをしながら、押しつけがましく彼女の返辞を要求します。
“Yes, ………”
そう云って彼女が不承々々に立ち上ったとき、その頬ッぺたは一層激しく、燃え上るように赧くなりました。
「あははは、とうとう奴さん、あんなに威張っていたけれど、西洋人にかかっちゃあ意気地がねえね」
と、熊谷がゲラゲラ笑いました。