Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
というような、「私ほどハイカラな、西洋人臭い女は居なかろう」と云いたげな、あの傲然とした面つきはどうだ。あれで英語の「え」の字もしゃべれず、パッシヴ・ヴォイスとアクティヴ・ヴォイスの区別さえも分らないとは、誰も知るまいが己だけはちゃんと知っているのだ。………
私はこっそり頭の中で、こんな悪罵を浴びせて見ました。彼女は少し反り身になって、顔を仰向けにしているので、ちょうど私の座席からは、彼女が最も西洋人臭さを誇っているところの獅子ッ鼻の孔が、黒々と覗けました。そして、その洞穴の左右には分厚い小鼻の肉がありました。思えば私は、この鼻の孔とは朝夕深い馴染なのです。毎晩々々、私がこの女を抱いてやるとき、常にこう云う角度からこの洞穴を覗き込み、ついこの間もしたようにその洟をかんでやり、小鼻の周りを愛撫してやり、又或る時は自分の鼻とこの鼻とを、楔のように喰い違わせたりするのですから、つまりこの鼻は、―――この、女の顔のまん中に附着している小さな肉の塊は、まるで私の体の一部も同じことで、決して他人の物のようには思えません。が、そう云う感じを以て見ると、一層それが憎らしく汚らしくなって来るのでした。