Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
するのでした。一度は私が馬になって彼女を背中に乗せたまま、部屋の中を這って歩いたことがありました。
「ハイ、ハイ、ドウ、ドウ!」
と云いながら、ナオミは手拭を手綱にして、私にそれを咬えさせたりしたものです。矢張そう云う遊びの日の出来事でしたろう、―――ナオミがきゃっきゃっと笑いながら、あまり元気に梯子段を上ったり下りたりし過ぎたので、とうとう足を蹈み外して頂辺から転げ落ち、急にしくしく泣き出したことがありましたのは。
「おい、どうしたの、―――何処を打ったんだか見せて御覧」
と、私がそう云って抱き起すと、彼女はそれでもまだしくしくと鼻を鳴らしつつ、袂をまくって見せましたが、落ちる拍子に釘か何かに触ったのでしょう、ちょうど右腕の肱のところの皮が破れて、血がにじみ出ているのでした。
「何だい、これッぽちの事で泣くなんて! さ、絆瘡膏を貼ってやるから此方へおいで」
そして膏薬を貼ってやり、手拭を裂いて繃帯をしてやる間も、ナオミは一杯涙をためて、ぽたぽた洟を滴らしながらしゃくり上げる顔つきが、まるで頑是ない子供のようでした。傷はそれから運悪く膿を持って、五六日直りませんでしたが、毎日繃帯を取り替えてやる度毎に、彼女はきっと泣かないことはなかったのです。