Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
恐らく私が泣き声を出したり、顫え声を出したりして、こんなに雄弁に、こんなにずうずうしくしゃべったことは、生れて始めてだったでしょう。が、電話が済むと、私はほッとするどころでなく、今度は浜田の来てくれるのが、無上に待ち遠になりました。多分今日じゅうにとは云ったけれども、若し今日じゅうに来ないようなら、どうしたらいいだろう?―――いや、どうしたらと云うよりも、自分はどうなってしまうだろう? 自分は今、一生懸命ナオミを恋い慕っているより外、何の仕事も持っていないのだ。どうすることも出来ずにいるのだ。寝ることも、食うことも、外へ出ることも出来ないで、家の中にじーッと籠って、あかの他人が自分のために奔走してくれ、或る報道を齎してくれるのを、手を束ねて待っていなければならないのだ。実際人は、何もしないでいる程の苦痛はありませんが、私はその上に死ぬほどナオミが恋しいのです。その恋しさに身を懊らしながら、自分の運命を他人に委ねて、時計の針を視詰めているということは、考えて見てもたまらないことです。ほんの一分の間にしても、「時」の歩みと云うものが驚くほど遅々として、無限に長く感ぜられます。