Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
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「あたし?―――荷物を取りに来たのよ」
「荷物は持って行ってもいいが、お前、何処から這入って来たんだ」
「表の戸から。―――あたしン所に鍵があったの」
「じゃあその鍵を置いて行っておくれ」
「ええ、置いて行くわ」
それから私は、ぐるりと彼女に背中を向けて黙っていました。暫くの間、彼女は私の枕もとでばたンばたン云わせながら、風呂敷包みを拵えているのでしたが、そのうちにきゅッと帯を解くような音がしたので、気が付いて見ると、彼女は部屋の隅の方の、しかも私の視線の届く場所へやって来て、後向きになって、着物を着換えているのです。私はさっき、彼女が此処へ這入って来た時、早くも彼女の服装に注意したのですが、それは見覚えのない銘仙の衣類で、しかも毎日そればかり着ていたものか、襟垢が附いて、膝が出て、よれよれになっているのでした。彼女は帯を解いてしまうと、その薄汚い銘仙を脱いで、これも汚いメリンスの長襦袢一つになりました。それから、今引き出した金紗縮緬の長襦袢を取って、それをふわりと肩に纏って、体中をもくもくさせながら、下に着ていたメリンスの方を、するすると殻を脱ぐように畳の上へ落します。