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Japanische Klassiker mit Furigana

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ちじんのあい

痴人の愛

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme

Aozora Bunko

「まあ、そんな所?」

「そんな所さ」

「あたし、何処か、海水浴へ行きたいなあ」

突然そう云ったナオミの口調には、だだッ児のような可愛らしさがありました。

「じゃ、近いうちに涼しい処へ連れて行こうか、鎌倉がいいかね、それとも箱根かね」

「温泉よりは海がいいわ、―――行きたいなア、ほんとうに」

その無邪気そうな声だけを聞いていると、矢張以前のナオミに違いないのでしたが、何だかほんの十日ばかり見なかった間に、急に身体が伸び伸びと育って来たようで、モスリンの単衣の下に息づいている円みを持った肩の形や乳房のあたりを、私はそっと偸み視ないではいられませんでした。

「この着物はよく似合うね、誰に縫って貰ったの?」

と、暫く立ってから私は云いました。

「おッ母さんが縫ってくれたの」

「内の評判はどうだったい、見立てが上手だと云わなかったかい」

「ええ、云ったわ、―――悪くはないけれど、あんまり柄がハイカラ過ぎるッて、―――」

「おッ母さんがそう云うのかい」

「ええ、そう、―――内の人たちにゃなんにも分りゃしないのよ」

そう云って彼女は、遠い所を視つめるような眼つきをしながら、

「みんながあたしを、すっかり変ったって云ってたわ」