Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
―――その時の書生の、捨てられた自分を我と我が身で蔑むような、思いの外な彼女の出世をせめても己れの喜びとする心持。―――こう云ってみても、矢張十分に説き尽してはいませんけれども、強いて譬えればそう云ったようなものでしょうか。とにかく今までのナオミには、いくら拭っても拭いきれない過去の汚点がその肉体に滲み着いていた。然るに今夜のナオミを見るとそれらの汚点は天使のような純白な肌に消されてしまって、思い出すさえ忌まわしいような気がしたものが、今はあべこべに、その指先に触れるだけでも勿体ないような感じがする。―――これは一体夢でしょうか? そうでなければナオミはどうして、何処からそんな魔法を授かり、妖術を覚えて来たのでしょうか? 二三日前にはあの薄汚い銘仙の着物を着ていた彼女が、………
トン、トン、トンと、再び威勢よく階段を降りる足音がして、その新ダイヤの靴の爪先が私の眼の前で止まりました。
「譲治さん、二三日うちに又来るわよ」
と、彼女は云うのです。………眼の前に立ってはいますけれども、顔と顔とは三尺ほどの間隔を保ち、風のように軽い衣の裾をも決して私に触れようとはしないで、………