Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
をする、何でも彼女の注文通りに芸当をやっていれば、しまいには獲物に有りつけるだろうと、毎日々々、鼻をうごめかしていましたが、私の予想は容易に実現されそうもなく、今日はいよいよ仮面を脱ぐか、明日は魔の手が飛び出すかと思っても、その日になると危機一髪と云うところでスルリと逃げられてしまうのです。
そうなると私は、今度はほんとうに懊れ出しました。「己はこの通り待ちかねているんだ、誘惑するなら早くしてくれ」と云わぬばかりに、体中に隙を見せたり、弱点をさらけ出したりして、果ては此方からあべこべに誘いかけたりしました。しかし彼女は一向取り上げてくれないで、
「何よ譲治さん! それじゃ約束が違うじゃないの」
と、子供をたしなめるような眼つきで、私を叱りつけるのです。
「約束なんかどうだっていい、己はもう………」
「駄目、駄目! あたしたちはお友達よ!」
「ねえ、ナオミ、………そんなことを云わないで、………お願いだから、………」
「まあ、うるさいわね! 駄目だったら!………さ、その代りキッスして上げるわ」
そして彼女は、例のはッと云う息を浴びせて、
「ね、いいでしょ? これで我慢しなけりゃ駄目よ、これだけだって友達以上かも知れないけれど、譲治さんだから特別にして上げるんだわ」