Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
ナオミは今しも、風呂の帰りに戸外の風に吹かれて来たので、湯上り姿の最も美しい瞬間にいました。その脆弱な、うすい皮膚は、まだ水蒸気を含みながらも真っ白に冴え、着物の襟に隠れている胸のあたりには、水彩画の絵の具のような紫色の影があります。顔はつやつやと、ゼラチンの膜を張ったかの如く光沢を帯び、ただ眉毛だけがじっとりと濡れていて、その上にはカラリと晴れた冬の空が、窓を透してほんのり青く映っています。
「どうしたんだい、朝ッぱらから湯になんぞ這入って」
「どうしたって大きなお世話よ。―――ああ、いい気持だった」
と、彼女は鼻の両側を平手でハタハタと軽く叩いて、それからぬうッと、顔を私の眼の前へ突き出しました。
「ちょいと! よく見て頂戴、髭が生えてる?」
「ああ、生えてるよ」
「ついでにあたし、床屋へ寄って顔を剃って来ればよかったっけ」
「だってお前は剃るのが嫌いだったじゃないか。西洋の女は決して顔を剃らないと云って。―――」
「だけどこの頃は、亜米利加なんかじゃ顔を剃るのが流行っているのよ。ね、あたしの眉毛を御覧なさい、亜米利加の女はこんな工合にみんな眉毛を剃っているから」