Japanische Klassiker mit Furigana
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ふうてんろうじんにっき
瘋癲老人日記
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 瘋癲老人日記 (ふうてんろうじんにっき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 98.490 Zeichen · 196 Bildschirme
その前に、颯子夫人は十七日の午後三時頃羽田から狸穴の宅へ帰った。夫人は直ちに電話口へ浄吉氏を呼び出して、老人の精神状態がいよ/\奇異であるために、もはや自分は一日も行動を共にするに堪えなくなり、勝手に自分だけ先に帰って来た由を告げた。夫婦は相談の結果、老夫人には内密にして、友人の精神科医井上教授を二人で訪い、いかに処置したらいゝかを尋ねた。教授の意見としては、老人の病気は異常性慾と云うべきもので、目下の状態では精神病とは云えない、たゞこの患者には情慾が常に必要であって、それがこの老人の命の支えとなっていることを考えると、それに適応する取り扱いをしてあげなければいけない、颯子夫人はその点によく注意して患者をみだりに興奮させたり、患者の意に逆らったりしないようにし、つとめてやさしく看護してあげて欲しい、それが唯一の治療法であるとのこと。依って浄吉氏夫婦は、老人の帰京に接して以来出来るだけ教授の意見に従って老人を遇していた。
二十日 火曜日 晴
午前八時、体温三五・五度、脈搏七八、呼吸一五、血圧一三二―――八〇。一般状態は特に変化を認めない。言葉や動作は不気嫌の模様。