Japanische Klassiker mit Furigana
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らい
癩
島木 健作
Lesen Sie 癩 (らい) von 島木 健作 (しまきけんさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.753 Zeichen · 74 Bildschirme
「何だ! 寝そべっている奴があるか、どうしたんだ?」
太田がだまって枕もとの洗面器を指さすと、彼は愕然とした面持でじっとそれに見入っていたが、やがてあわててポケットから半巾を出して口をおおい、無言のまま戸を閉じ急ぎ足に立ち去った。
やがて医者が来て簡単な診察をすまし、歩けるか、と問うのであった。太田がうなずいて見せると彼は先に立って歩き出した。監房を出る時ふと眼をやると、洗面器の血潮はすでに夏の日の白い光線のなかに黒々と固まりかけていて、古血の臭いが鼻先に感ぜられた。
日のなかに出ると眼がくらくらとして倒れそうであった。赤土は熱気に燃えてその熱はうすい草履をとおしてじかに足に来た。病舎までは長い道のりであった。どれもこれも同じようないくつかの建物の間を通り、広い庭を横ぎり、また暗い建物の中に入りそれを突き抜けた。病舎に着くとすぐに病室に入れられ、氷を胸の上にのせて、太田は絶対仰臥の姿勢を取ることになったのである。
七日の間、彼は夜も昼もただうつらうつらと眠りつづけた。その間にも、凝結した古血のかたまりを絶えず吐き続けた。彼は自分の突然落ちこんだ不幸な運命について深く考えてみようともしなかった。