Japanische Klassiker mit Furigana
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しろくれない
白くれない
夢野 久作
Lesen Sie 白くれない (しろくれない) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.846 Zeichen · 50 Bildschirme
さては此の和尚。天台寺の住寺とは佯り。まことは切支丹婆天蓮の徒と思ひしが、それも佯り。そのまことは、かゝる山中に潜み隠れ居る山賊夜盗の首領なりしかと今更に肝を消しつ。片面鬼三郎生年二十四歳、此処に生命を終るかと観念の眼を閉ぢむとする折しもあれ、和尚の背後、方丈に通ふ明障子の半開きたる間より紫色の美しき物影チラ/\と動けり。最前見たる色若衆と思しく半面をあらはして秘かに打ち笑みつ。手真似にて斬れ/\。その鉄砲は無効々々と手を振る体なり。
扨は天の助くる処か。心は神業。運命は悪魔のわざとこそ聞け。一か八かと思ふ間あらせず。背後の上り框に立架けたる錫杖取る手も遅く、仕込みたる直江志津の銘刀抜く手も見せず。真正面より斬りかゝる。その時、和尚の手中の火打種子島、パチリと音せしのみにて轟薬発せず。その毛だらけなる熊の如き手首、種子島を握りたるまゝ、わが切尖にかゝりて板の間へ落ち転めけば、和尚悪獣の如き悲鳴を揚げ、方丈の方へ逃げ行かむとするに、彼の若衆、隔ての障子を物蔭より詰めやしたりけむ。一寸も動かず。驚き周章てゝ押破らむとする和尚の背後より跳りかゝり、左の肩より大袈裟がけに切りなぐり、板の間に引き倒ふして止刺刀を刺す。