Japanische Klassiker mit Furigana
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しろくれない
白くれない
夢野 久作
Lesen Sie 白くれない (しろくれない) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.846 Zeichen · 50 Bildschirme
そが中に突立ちたる奈美女は七宝の大香炉に白檀の一塊を投じ、香雲縷々として立迷ふ中より吾をかへりみて、かや/\と笑ひつゝ、此の部屋の楽しみ、わかり給ひしかと云ふ。
流石のわれ言句も出でず。総身に冷汗する事、鏡に包まれし蟇の如く、心動顛し膝頭、打ちわなゝきて立つ事能はず。ともかくも一度、方丈に帰らむとのみ云ひ張りて、逃ぐるが如くマリア像の下より這ひ出でしこそ笑止なりしか。
されどもわれ、つひに此の外道の惑ひを免るゝ能はず。此の寺に踏み止まりて奈美女と共に昼夜をわかたず、冬あたゝかく夏涼しき土窖の中に、地獄天堂を超えたる不可思議の月日を送り行くに怪しむ可し、一年の月日もめぐらさぬうちに、何時となく気力衰へ来る心地しつ。万豪和尚より習ひ覚えしといふ奈美女の優れたる竹抱、牛血、大蒜、人参、獣肝、茯苓草のたぐひを浴びるが如く用ふれども遂に及ばず。果ては奈美女の美しく化粧せる朝夕のうしろ姿を見る事、虎狼よりも恐ろしく思はるゝやうになり来りぬ。
こゝに不思議なるは、彼の寺男の馬十なり。
彼の男、毎日未の刻より申の刻に到る間の日盛りは香煙を吸ふと称して何処へか姿を消しつ。