Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しろくれない

白くれない

夢野 久作

Lesen Sie 白くれない (しろくれない) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.846 Zeichen · 50 Bildschirme

Aozora Bunko

此の怨み晴れやらぬものと思へと狼の吠ゆるが如く喚めき立つるを、何を世迷言云ふぞ、と冷笑ひつ。此世は此世限り。人間の死後に魂無き事、犬猫に同じきを知らずや。汝等男女こそ覿面の因果応報、思ひ知らずやと云ひも終らず、馬十の脳天を唐竹割にし、奈美女の死骸を打重ねて止刺刀を刺し、その上より部屋の中の珍宝、奇具を片端より覆へして打重ねたるまゝ本堂の下を潜りて外に出で、血刀と衣服を前なる谷川に洗ひ浄めて、悠々と方丈に帰り来りぬ。

去る程に其の日の残る半日の暮れつ方まで、われは只管に恍惚として夢の中なる夢の醒めたる心地となり、何事も手に附かず、夕餉の支度するも倦く、方丈の中央に仰向きに寝ね伸びて、眠るともなく醒むるとも無くて在りしが、扨、夜に入りて雨の音しめやかに、谷川の水音弥増るを聞くに付け、世にも不思議なる身の運命、やう/\に思ひ出でられつ。床に入りても眼、冴え/″\として眠むられず。

眠むられぬまゝに思ふやう。神も仏も在しまさぬ此世に善悪のけぢめ求むべき様なし。たゞ現世の快楽のみこそ真実ならめ。人の怨み、誹りなぞ、たゞ過ぎ行く風の如く、漂ふ波にかも似たり。