Japanische Klassiker mit Furigana
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しろくれない
白くれない
夢野 久作
Lesen Sie 白くれない (しろくれない) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.846 Zeichen · 50 Bildschirme
綴り行く程に思ひの外に筆進まず。二月がほど日を送り、早くも梅雨上りの若芽萌え立つ今日の日はめぐり来りぬ。
さる程にわれ、今朝の昧爽より心地何となく清々しきを覚えつ。小暗きまゝに何心なく方丈の窓を押し開き見るに、思はず呀と声を立てぬ。
此間馬十が植ゑ蒔きし梅の根方のくれなゐの種子、いつの間にか芽を吹きにけむ。窓の上の屋根に打ちかぶさるばかりに茂り広ごりたるが、去年の春見しが如き、血の色せる深紅の花は一枝も咲き居らず。屍肉の如く青白き花のみ今を盛りと咲き揃ひ居りしこそ不思議なりしか。
此時のわが驚き、いか計りなりけむ。彼の馬十が末期に叫びし言の葉を眼の前に思ひ知りて、白日の下、寒毛竦立し、心気打ち絶えなむ計りなりしか。
さてこそ人の怨みは此世に残るものよ。神も仏もましますものよと思へばいとゞ空恐ろしく、思はず本堂によろめき入りて御本尊の前に両手を合はせ。何事のおはしますかは知らず。申訳無く面目無し。かしこき天地の深く大なる心を凡夫の身勝手にて推し計りしことのおぞましさよ。此上に生き長らへて罪業を重ねむより、死して地獄の苛責に陥ち、今までの罪の報いを受けむこそ中々に心安けれ。