Japanische Klassiker mit Furigana
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しらぎく
白菊
夢野 久作
Lesen Sie 白菊 (しらぎく) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.486 Zeichen · 25 Bildschirme
大の男が二人がかりでもどうかと思われる巨大な白菊の満開の鉢を、ヤットの思いで胸の上まで抱え上げるうちに、彼の全身は、新しい汗で水を浴びたようになった。その夜露と泥とで辷り易くなった鉢の底を、生命カラガラ肩の上に押し上げて、よろめく足を踏み締めながら、外廊下のマットの上を一歩一歩と階段に近づいて行った時に彼は、幾度も幾度も今度こそ……今度こそ気が遠くなって、引っくり返るのじゃないかと危ぶんだ。
彼はそれから一歩一歩と、無限の地獄に陥ち込むような怖ろしい思いを繰り返しながら、石の階段を登って行った。それから開け放されたままの扉の中へ、中腰のままジリジリと歩み入って、向うの窓際まで一歩一歩と近づいて来ると、両足を力一パイ踏み締めて立ち佇った。
彼は肩の上に喰い込んでいる菊の鉢を、そのまま、眠っている少女の頭部めがけて投げ付けたい衝動を、ジット我慢しながらモウ一度、寝台の中を白眼み付けた。
……畜生……ブチ殺した方が面黒えかも知れねえんだが……それじゃ俺の意地が通らねえ。タタキ付けて逃げ出したと思われちゃ詰まらねえかんな……畜生……。
と唇を噛み締めながら考えた。