Japanische Klassiker mit Furigana
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しらふじ
白藤
宮本 百合子
Lesen Sie 白藤 (しらふじ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.810 Zeichen · 16 Bildschirme
に心だよりを感じていたらしく思われる。
母の父、私たちにとって西村のおじいさんになる人は、明治三十五年ごろに没していて、向島の生家には、祖母と一彰さんと龍ちゃんという男の子がいた。
風呂場のわきにかなり大きい池があって、その水の面は青みどろで覆われ、土蔵に錦絵があったり、茶の間にはお灸の匂いが微かにのこっているという風な向島の家は、陰気でいつもいろいろのごたごたがあった。
向島のおばあさんと母とが、林町のうちの長火鉢の前で二人とも涙をこぼしながら何か云いつのっているのを、小さい私が雪どけ水の落ちる軒下で龍の髯をぬきながら、困惑した気持できいていたようなこともある。
たった一人の妹とも、母は苦しい縺れのまま生涯過した。
小さい娘に母は品川の伯父さんが、明治の日本へ初めて近代の皮革事業をもたらした見識を賞讚してきかせた。
「謙吉さんが生きていてくれて、品川の伯父さんと一緒だったら、お母さまもどんなに安心だったかしれないのにね」
とも云った。
謙吉さんというのは母の長兄で、アメリカへ行っていて、帰ったら程なく気が変になった。田端の白梅の咲いている日当りよい崖の上に奥さんと暮していて、一日じゅう障子の前に座り、一つ一つと紙に指で穴をあけて、それを見て笑っているという気違いであった。