Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しろあり

白蟻

小栗 虫太郎

Lesen Sie 白蟻 (しろあり) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.099 Zeichen · 106 Bildschirme

Aozora Bunko

と或る場合に対する異常な決意を仄かせて、滝人はきっと唇を噛んだ。しかし、その硬さが急に解れていって、彼女の眼にキラリと紅い光が瞬いた。すると、鼻翼が卑しそうに蠢いて、その欲情めいた衝動が、渦のような波動を巻いて、全身に拡がっていった。

「そして貴方、時江だけが、家族の中でただ一人、微妙な痛々しい存在になっているのです。もうあの人には、本体がなくなっていて、ただ影を落した、泉の中の姿だけが生きているようなのです。その娘は、冷たい清らかな熱のない顔付きをしていて、少しでも水の面を動かそうものなら、たちまちどこかへ消えてでもしまいそうな、弱々しさがございます。それですから、お母さまにはいつものように邪慳で、我儘のきりをいたしますけれども、自分が受けようとする感動には、きまって億劫そうに、自分から目を瞑っては避けてしまうのです。ええようく、私にはそれが判っておりますの。あの人は、兄の十四郎の荒々しさを怖れると同じように、やはり私の眼も――。いいえ私だって、あの人の側では荒い息遣いをしてもいかず、自分の動悸でさえ、水面が乱れてしまうことぐらいは承知しているのですけれど、あの熱情を、貴方に代えて向ける人と云えば、時江さん以外に誰がありましょうか。