Japanische Klassiker mit Furigana
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せきゆのみやこバクーへ
石油の都バクーへ
宮本 百合子
Lesen Sie 石油の都バクーへ (せきゆのみやこバクーへ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.004 Zeichen · 16 Bildschirme
けれども目の下の旧市街は低い近東風の平屋根の波つづきで、平屋根の上には大小の壺が置いてあるのなども見えるのである。渋っぽい、うるしのような匂いのする露路へ入ると、ぎっしり並んだ箱の蓋をあけたように種々様々の韃靼人の店があった。ロシア語で「食堂」と書き、あとは右書きの地方文字で看板をかかげた店などでも、覗いて見ると、店も住居もたった一つであった。奥に家族の寝台がある土間に床几と卓を並べ、燻る料理ストーブが立っているわきの壁に、羊の股肉とニンニクの玉とがぶら下っている。そういう風なのである。
バクー名所の一つである九世紀頃のアラビア人の防壁を見物して、磨滅した荒い石段々を弾む足どりでイラ草の茎を片手にもって降りて来たら、わきの共同便所の前から十一二歳の少年の一団がやって来る。見ると真中の一人が、便所へおとしたその糞だらけの靴を当惑そうに紐でぶら下げ、片足は裸足のまま、軽く跛をひいて歩いて来る。それをとりまく少年たちは、いずれも真面目な心配を顔に現して、惨めな靴をのぞき込みつつ、大股に跟いて歩いて来るのであった。
バクーの市街には、驚くほど古いものと新しいものとが入り混っている。