Japanische Klassiker mit Furigana
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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
Lesen Sie 石狩川 (いしかりがわ) von 本庄 陸男 (ほんじょうむつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 253.535 Zeichen · 506 Bildschirme
「見て下さらんか? 虫が喰いついとるようで」
「どこでござる」
「この中で――」と、老人は枯れた指で自分の眉毛を示した。
「ははあん?」
「まん中あたりと覚えるが」
「これでござるか」
「それ、それ、――おお」
椀を片づけていた人夫がのぞきこんだ。
「ダニですぜ、ご老体」
「ダニとは何じゃ」
「毛のあるところに喰いつく虫で」
「さて、血迷ったかこのダニめ、老人の血がうまかろう筈はあるまいに、――取ってくれんか」
「どれ――」と、近くの人夫は大野を押しのけて行った、「要領がありましてな、首だけ取るとまたあとが脹れる」
「奸賊めが」
「そら」と掛声した。人夫は爪に挾んだ豆粒大の虫を彼らに見せて、「笹やぶに、どうも、多いらしい、これは熊か鹿に喰いつくやつでしたろう」
「極刑に処して下され、火の中にたたきこんで下され」
その虫は燠の上でぷちりと動顛した。
「薩賊のごときやつでござった」と老人は立ちあがった。
彼らは声を合せて笑った。
「よろしい、火を消して――」と阿賀妻も草鞋をふみしめていた。
「出発いたそう」
窄った谷底にいた彼らにとって、朝は、蓋のようにかぶさる頭上の霧からゆっくり近づいていた。