Japanische Klassiker mit Furigana
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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
Lesen Sie 石狩川 (いしかりがわ) von 本庄 陸男 (ほんじょうむつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 253.535 Zeichen · 506 Bildschirme
日蔭の窪地にはまだ雪が残っていた。萌えだした雑草が路を塞いでいた。嫩い木の葉は浅黄色に陽を透していた。雪どけ水を湛えたイシカリ川が、その時は右手に、枯れた前年のヨシの穂のうえに、または木立の隙間に隠見していた。東蝦夷からシコツの山を越え、彼ら一同百六十名の老幼男女がはるばるとやって来たのである。この大きな川を渡って行った――彼が今朝がた出て来たシップと云う土地に行きついた。そこに落ちつくのをただひとつの楽しみにしていたことである。しかし、今、その川を左に見ながら急いでいる阿賀妻は、今日限りあの地で受けた幻滅をかなぐり棄てる覚悟であった。つくづくと見まわした沿道の風景はまだ記憶に生々しい。だが、その変化は更にはげしかった。まっ先に気づくのは、息つぎ場所の駅逓である。
彼らが駐ることを許された川のあちら側には、節食節衣の生活がみじめな口をあげていた。川を渡ればこちらでは、官の補給が行きとどいていた。道も築かれている。使庁のある場所は、空気の色でも見わけられるようであった。人間の匂いがあり、建設の気配があり、ひらけて行く土地のざわめきがほの明るく漂っている。