Japanische Klassiker mit Furigana
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そぼのために
祖母のために
宮本 百合子
Lesen Sie 祖母のために (そぼのために) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.632 Zeichen · 16 Bildschirme
昔から祖母は謡曲好きなのに、近頃若い者達の買いためるレコードは、皆西洋音楽のものであった。それらもすきでききはしたが、時々思いついたように、謡のは無いかと云い出した。田舎に出かける数日前の夜も祖母は私にそれを云い出した。私は、彼方此方捜して見た。長唄はあるが謡は無い。祖母はもう聴かれるものと思い、わざわざ椅子の上に坐って待ちかまえている。私は、素気なくありませんと云えなくなった。仕方なく、度胸を据えて、長唄の石橋をかけた。祖母は、それとは知らず、掛声諸共鼓が鳴り出すと、きっちり両手を膝につっかい、丸まった背を引のばすようにして気張った。その姿は、滑稽でもあり、また気の毒至極であった。実際聴きわける耳もないのに謡と思うとああいう風に気を張るのかと思うと、暗い一念、という印象が強く私に遺されていた。先ず本ものの謡がきかされてよかった。
腸の方は、少しずつよい方に向い、祖母は甘酒を頻りに啜った。食慾は余りつかない。そのうちに父が九州まで出張しなければならなくなった。用事は彼を待っているが気が進まず、やっと、医師の保証で出立した。出立の夕方父は、隠居所に行った。