Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぴこんちゅうかん
神秘昆虫館
国枝 史郎
Lesen Sie 神秘昆虫館 (しんぴこんちゅうかん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.803 Zeichen · 213 Bildschirme
だが迂濶に立ち廻わると、今度も煮え湯を飲まされそうだよ。現に攫われてしまったんだからねえ」
心配そうに呟いた。
「だが行先は解っている。それだけがこっちの付け目だろうさ。それもさ街道を辿って行けば、随分時間もかかるだろう。近道を行けば何んでもない。柵頼柵頼」と声をかけた。
「は」と云って進んだのは、今会釈をした武士であった。
「神奈川の宿から海の方へ、ずっと突き出た芹沢の郷、そこまで近道を走っておくれ」
「かしこまりましてござります」
「道の案内は妾がしよう、ああそうだよ。駕籠の中からね。さあそれでは戸をお開け」
コトッと駕籠の戸が開いた隙から、スルリとはいった女方術師、
「それではおやり、足音を立てずに」
駕籠を包んだ田安家の武士達、トットットッと、走り出したが、見当違いの玉川の方へ、駈け去ってやがて見えなくなった。
月ばかりが後を照らしている。
シ――ンと界隈静かである。
いやいや界隈ばかりでなく、江戸内一帯静かであろう。
敢て江戸内ばかりでなく、日本国中夜のことだ。少くも昼間よりは静かだろう。
がしかしそれは表面だけのことで、裏面においては昼間よりも、さらに一層夜だけに、罪悪が行われているかもしれない。