Japanische Klassiker mit Furigana
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わたしのちち
私の父
堺 利彦
Lesen Sie 私の父 (わたしのちち) von 堺 利彦 (さかいとしひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.750 Zeichen · 12 Bildschirme
それから幾日たった後のことか知らんが、父も母もどこかに行って、私ひとり内にいた。フト悪心を起して、踏台を持って来て棚の上の鶴の子を取った。勿論たった一つだった。露見するかどうかと窺っていたが、誰も何とも言わない。そうこうする中に、また機会があって一つ取った。とうとう三つ取り、四つ取り、五つ取った。もういよいよ露見しないはずがない。幾ら年寄りがぼんやりでも、五つも不足してるのに気のつかんはずがない。困った、困ったと思いながら、また幾日も幾日も過ぎたが遂に誰も何とも言わなかった。結局、そのことはそれきりで、年寄りなどという者は随分馬鹿な者だくらいに考えていた。そして、ズット後になって、私が自分の浅はかさに思い当って、今さら冷たい汗を流したのは、父も母も亡くなってしまってからのことだった。
今一つ、私は父の机の抽出しから一円紙幣を盗んだことがある。その頃の一円は少なくとも今の十円の値打ちがあった。子供としては大金であった。私はすぐにそれを持って町に行き、新店という店で、唐紙と白紙をたくさん買った。たくさんと言っても五銭か十銭かだったろう。そして釣がないからと言うので、代は払わずに帰った。