Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 116.638 Zeichen · 233 Bildschirme
かねて、直義の手にひきとられていた養子の左兵衛佐直冬(幼名、不知哉丸)は、この一月ごろ、西国探題の名目をうけて、こつねんと都を去り、備後の鞆ノ津辺にとどまって、しきりに、従前からの師直がしていた下知状やら曲事を洗いだてて、これを直義へ報告していた。
「怪しからぬお手廻しよ」
師直がこれに憤慨したことはひと通りでない。
「たたけば、ほこりは、どこにも出よう。師直の沙汰とは申せ、すべては将軍家の御意志によるもの。これを師直の曲事となすは心得がたい。――察するに、錦小路どの(直義)こそ、直冬を西国へやって、自己の外援勢力を西にかためておく用心であろう。よろしい、そう正面切って、師直に挑んで来るなら、師直にも覚悟はある」
彼は、生来の闘志を大きな唇にむすんで、いらい寸分の油断はないつもりでいた。
ところが、ほどなく、師直は突如、罷免されて、屏居謹慎を仰せつかってしまった。
――直義から内々つよく密奏するところがあり、尊氏の意も度外視されて、ついにこの上命をみたものらしいがと、諸人はどうなることかと、この噂で一時もちきりだった。
事の断行をとる前に、直義は、一般の師直にたいする不人気という点を、かなり計算ずくめに考慮していたには違いない。