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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 116.638 Zeichen · 233 Bildschirme

Aozora Bunko

ただし湖上で、後光厳のきみに、お風邪をひかすな」

あくる日。後光厳の御船をかこむ一軍は湖上を行き、大部分の兵馬は、陸路を迂回して東坂本へ向って行った。

この大兵を目にみると、叡山側は一も二もなく山上の延暦寺へ後光厳をお迎えした。また尊氏は、さらに一歩を進めて、東山のみねに陣取った。

直冬とその一味の軍は、この二箇月余を洛中で驕りに驕っている気勢だった。一躍、都の主となり天下をここに取ったようにである。

「…………」

尊氏はそれを東山の陣地から見下ろして、ただの敵ならば起りそうもない憎悪やら複雑な感を催した。

京都は、彼が幕府を置いてからでも、猫と猫の間の鞠のように、奪ったり奪い返したりをくり返してきた。だから今さら無念はそれではない。

私情である。まったく彼だけの私情であった。――藤夜叉の産んだ、あのひよわい一病児の不知哉丸が、こんにち、都に君臨を見せようなどとは、かつては、夢想もしていない。それがしかも、尊氏誅伐の宣旨を南朝から申しうけて、公然と、義父直義の讐とも称えているのである。小癪とも何とも言いようはない。

「困ったやつ!」

じつに、尊氏には厄介な挑戦者であり、困惑きわまる相手ではあるのだ。