Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 116.638 Zeichen · 233 Bildschirme
「それがいかん。武者の心がけでない!」
と、親房の霜のような声は、ふいに正行の全身を打った。
「そちも聞いてはいよう。いまもよく人々が語り草にいう北畠顕家をちと鑑ともしたがいい。わが子のことゆえ、この口からはほめ難いが、かつて顕家は、千里の遠くからこれへ駈けつけ、大和、河内の賊軍を追いしりぞけ、よく先帝のみ心を安めたが、ついぞ伊勢にありしこの父へも、会いには来ず、吉野の御所へも、京都奪回を見る日まではと、いちどの伺候もしていなかった。そしてついに安倍野であのような忠烈な戦死をとげたのだ。……それとくらべて、楠木帯刀正行はどうかの?」
親房の心にはいつも子の顕家の死があった。親心の痛惜と、親ながらその子を鑑ともつねに言っているほどな子自慢のほこりがあった。
はしなくも、その気持ちが正行と自分の子との比較になって出たのだろうか、――比較された正行はつらかった。辱じないではいられない。どう考えても自分はおとる。
「悪うございました」
素直に彼はそれをみとめて言った。どういってみても、このひとに釈明する余地はないように思われているのである。正行はその弱小な体をいよいよ地へ小さくして。