Japanische Klassiker mit Furigana
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あきのまぼろし
秋の幻
豊島 与志雄
Lesen Sie 秋の幻 (あきのまぼろし) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.242 Zeichen · 9 Bildschirme
凡てが自分自身の棲家に籠るのである。そして凡てが自分の露わな姿を恐れるのである。
過去が彼に帰って来、彼の全部が彼のうちに露わになる時、彼は自分を産んだ母の懐のうちに帰らん事を思い、自分を生じた大地の膚に唇をつけん事を思った。そして其処には、母の懐の中には自分の温みがあり、黒い地面には自分の耕耘した青い野菜が育っていた。
その時彼は、存在することの嬉しさを感じ、また存在することの淋しさを感じた。そして彼は、存在する自己と存在した自己とを見た。存在するであろう自己は彼の視野の外に逸していた。それから彼は何物かに向って手を合したくなった。
庭の片隅に立つと、屋敷は高台だったので、野のはてまでも見渡せた。農夫等の稲取りの様がすぐ向うに見て取られた。一筋の街道の上には、籠を背負った行商の女の姿も見られた。彼女は、収穫時の稲田の間を廻って、樽柿と籾米とを換えて商うのであった。その樽柿をかじりながら子供等は藁束の間に遊んでいた。
「あり難い菩薩様で、米を一粒恵んでやれば十粒にして返して下さる、」と巡礼の女の云った言葉を、彼はその時何等功利的な打算もなしに思い浮べることが出来た。