Japanische Klassiker mit Furigana
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ひめられたるそうわ
秘められたる挿話
松本 泰
Lesen Sie 秘められたる挿話 (ひめられたるそうわ) von 松本 泰 (まつもとたい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.690 Zeichen · 18 Bildschirme
「衣川さんが他所からお帰りになって、それが分ったので、吃驚して警察へ訴えたんだそうでございます」
「旦那様、あの、家の前にお巡査さんが立番をしているんでございます」田舎から上京して間のない、少し頭脳の働きの鈍い女中が、おどおどしながらいった。
「そんな事何でもない。親類か何かが死骸の後始末をしにくるまで、番をしているんだ」
「まだ死骸があるんですか」女中は目を円くして首を竦めた。
浅田が食堂へゆくと、次の間で子供に衣物を着せていた妻の折江が、青白い不機嫌な顔をした子供を先に立てて入ってきた。
「おや、この児は起きてもいいのかい」
「真実はもう一日寝かしておくといいのですけれども、どうしても起きるといって、きかないのです」
「お隣りの米本さんのお婆さんが殺されたっていうじゃァないか」
「ええ、何ですか騒ぎですわね」
「犯人は捕ったのか」
「どうですか少しも存じません。衣川さんは昨夜警察へいったきり、まだ帰って来ないようです」
「昨夜何時頃だったろう。家で寝たのは十一時だったが、俺は疲労れていたもんだから、ぐっすり睡って了って、何にも知らなかった。お前は夜中に二三度起きたようだったが、何にも気がつかなかったかね」