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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひめられたるそうわ

秘められたる挿話

松本 泰

Lesen Sie 秘められたる挿話 (ひめられたるそうわ) von 松本 泰 (まつもとたい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.690 Zeichen · 18 Bildschirme

Aozora Bunko

青い碑を伝って流れ落ちる水が、音も立てずにふかふかした赤土に吸込まれてゆくのを見て、浅田は泪ぐましい心持になった。

墓地は真実に安息である。物質を中心にして相鬩いでいる都会生活とは何という相違であろう。

浅田は久々で両親を中心にした家庭を思い出した。その頃母親に甘えていた弟の幼顔がふと彼の心をかすめた。その弟も今では碌に兄の家へ寄りつかず、勝手な方面に彷徨い歩いているが、斯うして母親の前に立って考えると、弟は矢張り頼りない小さな児童のような気がして、ひとり歩きをさせておくのは痛々しいように思えた。

午近くになって浅田が自分の事務所へ着くと、数人の社員が襯衣一枚になって、忙しく働いている最中であった。机の上にはいつものように一かたまりになった書類が彼を待っていた。その中にはアメリカからの大きな注文の取消電報や、手形延期の懇請状、その他孰れも、不景気を語るもの許りである。端から目を通してゆくうちに、彼は眉を顰めて一葉の名刺を撮上げた。それには中野署刑事有吉俊太郎と記してある。

冷い麦湯を持って来た給仕が、

「先刻、その方がお見えになって、又午後に伺いますからといって帰りました」