Japanische Klassiker mit Furigana
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ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
Lesen Sie 秘境の日輪旗 (ひきょうのにちりんき) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 84.829 Zeichen · 169 Bildschirme
長い合羽を着た少女は、ようやく地下室の床の上に立つと、危く、
「あっ!」
と声をたてそうになったが、じっと息をのんで、おそろしい、陰気な部屋の中を見廻した。
荒れ果てた墓場のような地下室――うす暗い明りを背中にした六つの眼が、じっと少女の上に注がれているのだ!
頭株の男が腰に手を廻した。鋭い刃物の柄に手をかけると、痩せこけた顔に、にやりと凄い笑いをうかべた。
「勝手な真似をしやがると承知しねえぞ趙! ……一体誰にことわってこんな子供を連れて来たんだ」
「おっと親分、早まっちゃあいけませんよ。ちゃんとわけがあって連れて来たんだ……」
あわてて押し止めるような恰好をしながら、趙は親分と、しばらく小声で話しこんでいた。
上海……九竜丸……明日出帆……日本軍……例のところで……。
とぎれとぎれに聞えたが、ほんのすこししか支那語を知らない少女には、何の話やらさっぱりわからなかった。
香山飯店のおやじが、いつの間に用意してあったのか、贅沢な料理をテーブルの上に並べはじめた。
うまそうな炒り肉や、揚げた魚のにおいが、酒とたばこのにおいにまじって、漂っていた。
少女は急にひもじさを感じたらしく、思わず、テーブルのそばへ二足三足近づいて行った。