Japanische Klassiker mit Furigana
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ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
Lesen Sie 秘境の日輪旗 (ひきょうのにちりんき) von 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 84.829 Zeichen · 169 Bildschirme
生あたたかい、波のしぶきが、一時に、どっとボートの中になだれこみ、祥子は圧しつぶされたように、舟底に叩きつけられた。
宮崎運転士が、むんずと祥子の肩をつかんだ。
「しっかり、ボートにつかまっているんです、ちょっとでも手をはなしたら、おしまいですよ!」
一たん、波の谷底におし下げられたボートは、また不意に、ぶるぶると身をふるわしながら浮標のように浮び上って、波の背にたたき上げられた。
オールも、舵もむだだった。いや、母船をはなれた瞬間から、舵はもう、打ち砕かれていたのだ。ひとびとは無言のうちに、ボートに流込んで来る水を必死になってかい出した。
英夫は唇をくいしばったまま、じっと闇のかなたを見まもった。
一本の折れたマストと、操舵室を残した母船の黒い影が、ちらりと波間に浮んでいた。たえだえにはらわたをかきむしるような悲痛な汽笛の音が、聞えるような気がした。
そんなはずはない――あらしの中で牙をむいた海は、一瞬の間に、船も、船長ものみこんで、もう次の犠牲におどりかかっているのだった。
船長は、日章旗を抱いて戦死する勇士のように、従容と海底に没して行った。