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Japanische Klassiker mit Furigana

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ちごほうし

稚子法師

国枝 史郎

Lesen Sie 稚子法師 (ちごほうし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.609 Zeichen · 16 Bildschirme

Aozora Bunko

そうして此処は桔梗ヶ原であった。原に住んでいる鳥や獣は、彼の慈愛に慣れ親しんで庵室の周囲へ集まって来た。風雨の劇しい時などは部屋の中まで這入って来て彼の坐っている膝の上や肩の上などで戯れた。

或深夜のことであったが据えてある五個の位牌の前で彼は看経に更っていた。故主の位牌妻子の位牌、それから八沢の橋の上で討ち果たした二人の敵の位牌!

恩怨二ツ乍ら差別を立てず、彼は祭っているのであったが、看経中ばに不図彼は不思議な物音を耳にした。

「稚子法師の頭はてぎてぎよ」

調子を付けて斯う囃しながら、夫れに合わせて庵室の戸をてぎてぎてぎてぎと打つ者がある。

「はてな?」と阿信は首を傾げたが「いやいや心の迷いであろう。風が枝を鳴らす音かも知れない……」

斯う呟くと気を取り直し一心に看経を続けて行った。と復同じ音がする。

「稚子法師の頭はてぎてぎよ」

「てぎてぎてぎてぎ」と戸を叩く音! それは決して心の迷いでも無く風が枝を鳴らす音でも無い。確かに何者かが囃しているのである。阿信はじっと聞き澄ました。

その中に彼の心持は其戸の外の囃しに連れて次第に陽気になって来た。で彼は思わず斯う云った。