Japanische Klassiker mit Furigana
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あさまさんろく
空にむかひて 若杉鳥子随筆集
若杉 鳥子
Lesen Sie 空にむかひて 若杉鳥子随筆集 (あさまさんろく) von 若杉 鳥子 (わかすぎとりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.542 Zeichen · 14 Bildschirme
私の泊まった家は、病院であって宿屋なのである、いえ宿屋で病院だという方が適当かも知れない。余り病院くさくならないように、消毒液でも臭気のしない高価なものを使うとはいっているが、浅間山の頂を前にした古い田舎屋が病棟なのである。朝早くから百姓のお婆さん達が、病児を背負って遠い道を歩いてくる。診察に来たお婆さんがいうには、
「以前はなァあんた、少し重い病人だと長野までゆきやしたが、近頃はナ、盲腸でも何でも此処で手術して貰えるで、へぇみんな、ずんずん達者になりまさァ」
その有難い院長さんはどんな人かというに、外科手術が多いというから、誰でもあらゆる外科医のタイプを想像してみるだろう。処がそれは、大一番の丸髷に赤い鹿の子のてがらをかけた、たわやかな美人なのである。
「恐いね、女の外科手術なんざァ」泊まっている学生たちが手術室を窺いて、そんな失敬なことをいっていた。然し赤ん坊を抱いた、うら若い花嫁が、白い手術衣を纏って、メスを持ってる姿なんか、とても想像できない。午後は往診の自動車が来て、「サ、坊や、お母ちゃんの往診」御亭主が若い妻の手から赤ん坊を抱きとると、大丸髷の院長さんは、一人の看護婦に鞄を持たせて悠然と車に乗り込む。