Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるゆうかくでのできごと

空にむかひて

若杉 鳥子

Lesen Sie 空にむかひて (あるゆうかくでのできごと) von 若杉 鳥子 (わかすぎとりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.677 Zeichen · 46 Bildschirme

Aozora Bunko

『何処かで何事かあった?』

『S楼で心中があったんだ、無理心中が』

『男も女も死んじゃった?』

『男は死にもどうもしやしない、床の中へ潜りこんで小さくなって慄えてやがった』

『女の方は? 小父さん……』

『女の方は――ったって、首も何もくっついちゃあいないといって宣いだろう、ぼんのくぼの甘皮一枚で僅かに胴と続いてるだけの話だ……』

『………………………………』

『女の方を殺っちゃうと、奴ぁ急に恐くなっちゃいやがったんだな』

『へええ、随分よく切れるものね……』

『今日はまた運悪く、S楼じゃ今朝っから研屋を招んで料理場の包丁を皆残らず研がしといたんだとさ。すると夕方になって、野郎が台所へ水飲みに来たから、皆変だとは思ったが、その時鮪包丁が一本見えなくなった事は誰も気がつかなかったんだ。それで殺ったんだな、それに奴は他の遊郭でも無理心中をし損なった癖のある男で、楼のものも皆注意しぬいていたんだがな、ナニその男は商売も何もありゃあしないんだ、先に牛乳配達なんかした事のある男だって話だが……』

私の聴き得た事はそれだけだった。

また、ある娼妓は、夜半に眼を覚ますと、妙な物音を聴いた。