Japanische Klassiker mit Furigana
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かまどのなかのかお
竈の中の顔
田中 貢太郎
Lesen Sie 竈の中の顔 (かまどのなかのかお) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.439 Zeichen · 15 Bildschirme
「お客さんが来たのじゃないか」
三左衛門は人の影とも鳥の影とも判らないものが映ったように思ったので注意した。
「お客さんは来るには来ましたが、このお客さんが悪いお客さんで、困っております」
主翁は碁に夢中になっている。
「悪いお客なら、断らなくちゃならないな」
三左衛門は笑いながら縁側の方へちょと眼をやった。色の蒼白い痩せた僧がそこに立っていた。
「これは、旅僧」
三左衛門はちょと会釈した。
「ちょっと覗かしてもらいます、私もいたって碁が好きでな」
僧も三左衛門に会釈を返した。その声に主翁がはじめて気が注いた。
「や、これはお坊さんだな、まあ、どうかお掛けなさい」
「ちょっと覗かしてもらいます」
僧は黒い破れた法衣を着ていた。彼は冠っている菅笠の紐を解き解き縁側に腰をかけて、斜に碁盤の上を覗き込んだ。
「さあ、それでは往こうかな」
三左衛門は控えていた石をおろした。
「それでは、私もまいりましょうか、ここか、ここにしよう」
主翁はもう僧のことも忘れてしまったように石をおろしだした。
「それでは、私はここにする」
三左衛門のおちついた声に交って、主翁のきょときょとした声が聞えた。