Japanische Klassiker mit Furigana
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だいにこんにゃくぼん
第二菎蒻本
泉 鏡花
Lesen Sie 第二菎蒻本 (だいにこんにゃくぼん) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.739 Zeichen · 32 Bildschirme
「お近い内に。」
「…………」
「きっと?」
「むむ。」
「きっとですよ。」
俊吉は黙って頷いた。
暗くて見えなかったろう。
「きっとよ。」
「分ったよ。」
「可ござんすか。」
「煩い。」と心にもなく、車夫の手前、宵から心遣いに疲れ果てて、ぐったりして、夏の雨も寒いまでに身体もぞくぞくする癇癪まぎれに云ったのを、気にも掛けず、ほっと安心したように立直ったと思うと、
「車夫さん、はい――……あの車賃は払いましたよ。」
「有るよ。」
「威張ってさ、それから少しですが御祝儀。気をつけて上げて下さいよ、よくねえ、気をつけて、可ござんすか。」
「大丈夫でございますよ、姉さん。」と楫を取った片手に祝儀を頂きながら。
「でも遠いんですもの、道は悪し、それに暗いでしょう。」
「承合ましたよ。」
「それじゃ、お近いうち。」
影を引切るように衝と過ぎる車のうしろを、トンと敲いたと思うと夜の潮に引残されて染次は残ってしょんぼりと立つ。
車が路を離れた時、母衣の中とて人目も恥じず、俊吉は、ツト両掌で面を蔽うて、はらはらと涙を落した。……
「でも、遠いんですもの、路は悪し、それに暗いでしょう。」
行方も知らず、分れるように思ったのであった。