Japanische Klassiker mit Furigana
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むらさきのびん
紫の壜
豊島 与志雄
Lesen Sie 紫の壜 (むらさきのびん) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.802 Zeichen · 24 Bildschirme
知らしてね。」
私の顔をじっと見ながら、彼女は言うのだった。
それらのことが、私の頭にまざまざと蘇ってくるのだ。あの紫色の壜に、弓子はもう関心を持っていなかったのであろうか。或は故意に無関心を装っていたのであろうか。然しその壜が、彼女にとって、また私にとっても、宿命的なものとなった。そしてその壜のことと、あとで彼女が私に与えた積極的な熱い接吻のこととが、対照的に思い出されるのだ。
あの焼け跡の雑草の中で、私は、自分の愛情の惨めさ悲しさを見た。弓子の愛情の惨めさ悲しさを見た。そういう愛情を私はもう捨て去ろうと思う。その代り、弓子を自分のうちに生かそう。私と彼女は異った陣営の者ではない。一緒に手を取り合って歩くべき仲間だ。そしてあの紫色の壜にも、もう用はない。もしあれが私たちの手許にあったとしても、それは私たち自身に投げつけるためではなく、他の陣営に向って投げつけるためであらねばならぬ。
私が彼女の死体のそばへ帰っていったのは、よいことだった。もしもあのまま逃亡したら、私は永く救われなかったろう。私は勇敢に真実を肯定しよう。そして嘘は一切言うまい。私はいま監禁されており、不誠実な自白を誘導されておるが、勝利は常に真実の側にある筈だ。